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[コメント] PERFECT DAYS(2023/日=独)

パーフェクトデイズ。完全な調和が保たれた日々。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公が構築したPerfect Days(鍵の置き方、水やり、缶コーヒー、境内でのサンドイッチと撮影、銭湯、駅中の食堂などなど。そして目をつむる、夢をみる。)のルーティーンを守る生き方。それは静謐で閉ざされた世界、まるで死の世界のように感じた(見たことないけど)。毎晩眠りについて、本当はそのまま目覚めないことを望んでいるのに、また一日が始まっていく。ああ今日も生きているのか、、みたいな目覚め。

トイレ清掃が賽の河原の石積みみたいな、積んでも積んでも崩されてっていうのが、きれいにしてもまた次の日は汚物で汚れてて(映画ではかなりきれいだったけど)っていう無常感が似てる。っていうか、主人公が世の関わりから自分を消滅させようとして、自ら望んでトイレ清掃という仕事を選んでいるような気がする。でも石積みと違うのは、それが否が応でも社会の役に立ち社会に関わっていることだろう。

最初の同僚の恋愛の手助けが彼の世界にさざなみをたてる。そして家出してきた姪、スナックの元夫からの遺言、同僚の退職、彼が「頼られる存在」になり、どんどん他人が介在してくる。ぜんぜんパーフェクトじゃなくなっていく、そういう調和が乱される世界のアクティビティこそが生きるっていう感じで、「ちくしょう、今日も生きちゃっているよ」というのが、それまでの「ああ今日も生きているのか」という嘆息とともに吐き出されるそれとは違う一日の始まりが、嬉しくもあり悲しくもあり、悲しくもあり嬉しくもある、みたいなことがラストなのかな、と思った。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] ぽんしゅう[*]

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