[コメント] 麦秋(1951/日)
旧作品にましてドラマ的な作りが薄れ、エピソードの積み重なりに近くなっている。狂騒を描くのは映画の得意とするところ。一方、静謐をえがくのは至難の業。その静謐の中に人間の目に見えない部分(願望だとか、絶望だとか、個人の限界だとか、経済状態だとか病だとか死だかとまで含めて)を、視覚的に表現するのはさらに難しい。それを破綻なく平明に実現しているのがこの作品である。「騒がしさ」を追求する監督さんたちとは方向性も腕のレベルも映画に対する考え方の次元も違う。いくら言葉をつかっても誉めたりない。それにしても小津監督の作品の中で明るい笑顔で最終登場場面を迎える原節子は一本もない。映画の途中ではあの輝かしい笑顔をおもいっきり振りまいているのだが。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (9 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。