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[コメント] 麦秋(1951/日)

デジタル修復版にて再鑑賞。原節子のキャラクタが『晩春』とは一転して終始安定している。一見天然のようで、全てを悟っている慈母のようでもあり。複雑さを高度に安定させながら、淡島千景との秋田弁の応酬など意外な芸達者ぶりも見せる。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ところで、我々観客はこの2時間の物語を通じて一つの大家族が円満に解体していく過程を観ることになるのだが、菅井一郎東山千栄子のセリフから、これが長い長い家族の歴史の最後の一局面であったことを理解させられる。あの鎌倉の家に16年暮らしたということは戦争を跨いでいることになる。直截的な言葉はなくとも、次兄の不在と相まってその影を感じざるを得ない。当時の人々には言わずもがなの感覚であったのだろうが、21世紀の今になってもそれを深く静かに伝える力があるところにこの映画の凄さがある。

笠智衆はいつもの老け役を離れると、大根ぶりが際立つが愛嬌を生じている。逆にいつもの小津作品では後ろに引いている三宅邦子が存在感を見せているのが嬉しいところ。佐野周二が変な笑い方と独特のいやらしさで妙なアクセントになっている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)週一本 3819695[*] ゑぎ[*] ナム太郎 ぽんしゅう[*] けにろん[*] おーい粗茶

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