[コメント] ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生(1968/米)
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冒頭、姉弟がお墓の前で祈りを捧げている時、後方遠くに“もういる”っていうのがまずスゴい。「ババーン!」と登場するわけでもなく、そこに“もういる”。ただ気付かないだけ。それは「外見的にも(ほぼ)生きている時と変わらない」からこそ成り立つシチュエーションであり、その人間だった彼らが己の心情と無関係にモンスターと化していることに、何とも言えない感傷を持たされてしまいます。怖いんだけど何だか嫌いになれない。人懐っこいヤンキーみたいなもんです。
しかもそこで彼らゾンビに恐怖の軸を置くのではなく、むしろ人間たちの動きに持っていったことが今作の厚みとなっています。普通のモンスタームービーだったらもっとゾンビがワァワァやってキャーキャー言ってるだろうに、あくまで物語を動かすのは生きている人間たち。彼らが(追いつめられた結果だとしても)主体的に行動し、失敗し、反目し、その結果としてゾンビの餌食となっていく。「蘇り、伝染までする死者」なんてキャラクターを持ちながら、それに頼り切らずに物語を紡いだ結果が、この面白さってことなんでしょう。
そんな「人間観察映画」としての色合いが最も顕著に現れるのがクライマックスです。通常の映画ならあそこで生き残るのは意識を取り戻したバーブラであり、その彼女がラストで射殺されることでドラマチックな悲劇が誕生するはずなんです。それをまるで観客の感情移入を拒むかのようにあっさりと殺すことで、生き残ったベンの射殺をあくまでも“冷静な視点”のまま観せてしまう。取り残された観客の中には何とも言えない冷たい感覚だけが残るわけで、この底意地の悪さって相当なもんです。
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