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[コメント] デューン 砂の惑星PART2(2024/米)

じっくりと豊かに流れる「時間」の構築、ヴィルヌーヴの長所が息を潜めてしまっている。セカセカと筋の消化に追われるヴィルヌーヴなんて見たくない。珍しく撮影も悪く、不用意な人物のアップだらけで、巨大なはずの世界がえらく狭い場所に感じる。ツギハギのアクションにジマーの轟音を被せる反復も無造作で、ノーランがスベった時と同じ失望があった。前作の方が遥かに格上。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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いいシーンもあった。チャニによるポールへの「砂歩き」のレクチャーのシーン。黄昏時のアラキス、スパイスのきらめきを背景にして、独特のリズムを刻みながらシンクロする二人の動きがダンスシーンみたいで美しく、言葉でなくアクションで心が近付く瞬間を捉えており、その後心が離れてしまう過程を思えば、とても哀しい。このシーンはずっと見ていたいと思った。こういった細部が、今回はとても少なかったと思う。砂蟲の操蟲、皇帝の船の襲撃シーンのダイナミックさはもちろん良かったと思うけれども、むしろヴィルヌーヴ的には凡庸であるとすら思う。例えば、前作や『ブレードランナー 2049』、『ボーダーライン』なんて、一般的には無駄とすら思われるかもしれない細部だらけで、演出スピードもはっきり言っておっそいおっそいのだが、そこに映画世界を豊かにするヴィルヌーヴ演出の真髄があると、私は信じて疑わない。

振り返ってみると、かなりカタルシスに欠ける筋運びで、リンチ版はかなり呑気な単線構造だったんだなと思う。核や原理主義、狂信と信仰の問題など際どいモチーフをギリギリ消化して、チャニに背を向けさせたりするのは、ヴィルヌーヴらしい真摯だと思う。女たちの策謀やら愛らしき何かやらで道を選んだり選ばされたりの理不尽の果てにダークサイドに堕ちるのも一応コメディにならない格調で踏みとどまってもいる。ただ、何だかこの辺りを生真面目に処理しすぎるせいで、キャラクターが多面的になり過ぎてしまって、感情移入しにくくなってしまったようにも感じる。それはポールに限らず、スティルガーとかガーニー、ジェシカなんかもそうだと思う。前作から意識的にキャラクターイメージの転覆が図られている。それも含めた悲劇として見よというのが正しいのだろうが、そう納得させるだけの彫り込み、エピソードの誘導、時間が足りなかったのではないかと思う。

ところで、枝葉末節ではあるが、今回よくわからなかったのはシールドの扱い。前作でサーダカーとアトレイデスの戦闘ではちゃんとシールド使われていたのだが。都合良く捉えたか、忘れちゃったか。この辺の集中力が切れてる感じも私的には珍しいマイナスポイント。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)月魚[*] ゑぎ[*]

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