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[コメント] ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ゾンビの誕生(1968/米)

即物的ホラーに稀有なドラマ性を持ちえた奇跡的なGOOD作
junojuna

**ネタバレ注意**
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 何より導入部の奇跡的なホラータッチが絶妙である。モノクロームの不穏感、夜なのに明るいというこれから起ころうとする惨劇の予感を秘めた時空間設定に、隣人の匿名性恐怖を体現している最初のゾンビの登場シーンなど、サスペンスに満ち満ちた芯のある映画構築である。さらにはゾンビという即物的なモンスター描写を前面に出しながらも生命を脅かされるという極限状態に立たされた人間の業を対位的な配置で描いているというドラマ性も見逃せない。特に人物配置の明確な設定は象徴的な作劇術の旨みが表出していて感得深い。外的な脅威に包囲された民家には若いカップルと中年夫婦とその娘、そしてゾンビとなった兄への喪失感に朦朧としたバーバラに黒人青年のベンという7人であるが、ここで黒人であるベンだけが生命共同体といえる関係性がなくその点で孤独な存在となっている。そうした対位的な図式の中でベンは己を信じ闘い抜き唯一の生存者となるのだが、国家という大なる生命共同体の正義によって誤射されてしまうという悲劇的な結末を迎える。即物的映画でありながら深層心理に訴えかけるような構えをもったこの作品はやはりホラー映画の金字塔であり語り継がれるべきカルトクラシックである。

(評価:★4)

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